では、心理学の根幹は?
- 北林陽児
- 5月18日
- 読了時間: 4分
近頃は、再現性の危機から、
科学性の話をしてきましたね。
話は転じて、心の話に戻りましょう。
私たちは、日々、
様々な悩みや苦しみに苛まれて、
心穏やかとは言えない状態に
なることがあります。
そのような問題の原因は何かと言えば、
「ありのままを認めていないから」
と言うところに行きつきます。
全ての心の問題について、そうです。
何か自分が理想とする姿があって、
それと異なるような
状況や考えや感情に陥った時に、
その理想とは異なる
ありのままの状況や考えや感情を
認めることができない、
あるいは、
抱いていると気づくこともできない
ということが起きてしまいます。
これが、心の問題の原因です。
それとは逆に、
その問題を解決する方法は、
ありのままの気持ちに気づき、
認め、受容することです。
それができれば、
モヤモヤとした気持ちや、
様々な体調不良も
キレイに消え去ります。
この「ありのままを認める」こそ、
心理療法の根幹と言えるでしょう。
ところで、
この「(理想とは異なる)
ありのままを認める」
という心理療法の根幹は、
先日以来の科学性の話と
似たところがあると思いませんか?
科学性の中で最も重要な要件は、
科学的態度だと書いていました。
科学的態度とは、
「自分の仮説が反証されたら、
素直に認めること」でしたね。
これは、
「理想と異なるありのままを認める」
というかなり似ているというか、
ほぼ同じと言ってよいでしょう。
違いは、
科学の対象は、客観的事実であり、
心理療法の対象は、主観的事実だという
認める対象の違いです。
しかし、仮説と理想とは、
どちらも自分で生み出し、信じている
「幻想」であることは同じです。
つまり、
もしも自分の信じていたことが、
幻想だと分かったならば、
幻想だと素直に認めること、
これが
科学と心理療法に共通する
根幹なのです。
そうは言うものの、
自分が信じた「仮説または理想」が
間違っていたと認めるには、
なかなか辛いことでしょう。
科学者の場合には、
科学的態度が絶対条件として
教育されていますから、
当たり前のこととして
身に付いています。
ところが、
自分自身の心について、
「ありのままを認める」というのは、
その重要性も、具体的なスキルも
教育されることはありません。
それゆえに、
私たちは、悩んだり苦しんだりして、
心の問題を抱えてしまうのです。
そういうことが
きちんと広く教育されれば、
心や人生の問題から解放されて、
人々が幸せになっていくと
私は思ってます。
そして、
その具体的なスキルが心理療法です。
平たく言ってしまえば心理療法とは、
「ありのままを認める」ためのスキルです。
心理療法を使えば、
通常ではできない深いレベルで、
「ありのままの認める」ことができます。
そういう考え方やスキルを
人々が理解して使いこなせれば、
みんなが幸せに生きることができます。
これは、科学によって、
人類が進歩したのと同じ構造です。
前回のメルマガでは、
科学と心は水と油だと書きました。
しかし、
「間違いを素直に認める」という
科学的態度と
「ありのままを認める」という
心理療法の根幹とが、
実はよく似ているというのは、
興味深いことですね。
余談ですが、
最近私は、
心理療法の普及に努めるというか、
心理療法をもっとメジャーに、
身近にすることが、使命なのかなと
思うようになりました。
そういうことで、
次回からは、
心理療法はどんなものなのか?
とか、
具体的にはどんなふうに行うのか、
ということを書いていこうと思います。
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