前回は、自分の負の側面が実は、成長のエネルギーとなるという話をしました。
それに関連して、「心的外傷後成長」の話をしてみましょう。
心的外傷というのはトラウマのことですね。
トラウマは、実際の出来事の時に衝撃を受けるだけでなく、その後も同じ苦しみを繰り返すことで、
人生に大きな影響を与える大問題です。
しかし、そのトラウマを乗り越えたときに、成長を遂げるということが明らかになって、心的外傷後成長と呼ばれています。
具体的には、5つが挙げられており、まず「人間としての強さ」。
言うまでもなきことですが、トラウマの症状というのは、極めて苦しいもので、大きな困難を人生にもたらします。
自分の脆弱さ、醜さ、情けなさが、次々と現れて、トラウマの内容によっては、社会に適応できないような事態も起こってくるかもしれません。
しかし、そのような問題を解決して、乗り越えたときに、自分の解決力、回復力、つまり人間としての強さを実感することとなります。
トラウマもまた、1つの試練であり、それを乗り越えることで、成長が起きるということですね。
私自身も、東芝に勤めていた時代は、日々トラウマ症状に苦しみながら働いていました。
その当時は、いつ自殺してもおかしくないなと恐れていたのですが、今ではそういう時代を乗り越えたことが自信になっています。
これが人間としての強さと言えるでしょう。
それどころか、今となっては、東芝時代は、私の人生の中でも最も濃密な時代で、芝にとても感謝しています。
この感謝という気持ちも、5つの心的外傷後成長のうちの1つです。
トラウマ体験をすると、自分の今までの人生や、自分が持っている物に対する感謝が湧いてくるわけですね。
例えば、地震で命の危険を体験したことで、平穏な日常に対して感謝するようになったというのは典型的です。
感謝するようになったということは、価値観に変化が生じているということでもあります。
トラウマ体験をすることによって、お金や社会的地位のような外的な物から、絆や自己実現のような内的な物へと、価値観が変化する傾向があるそうで。
トラウマというのは、重症度の差こそあれ、特に珍しいものではなくて、誰でも持っているものです。
それをケアすることによって、大きな変化が生じることは確実です。
その変化は悪いものではなく、必ず良い変化が起きますから、それを「成長」と呼ぶことには、あまり抵抗がないと思います。
これを読んでいるあなたも、どの程度かは分かりませんが、なにかのトラウマは必ず持っています。
自分が体験している苦しみが、トラウマによるものであるとは、多くの人は気づかないのですが。
この心的外傷後成長の意味するところは、あなたが今直面している苦しみは、ただ無意味に苦しいだけではないということだと思います。
それは、成長するためのプロセスであり、いつかあなたには、成長を感じる日が訪れるのです。
そのように書いてみると、聖人じみた御託のように感じられるかもしれません。
しかし、現実的に、心理療法を通して関わると、これは確実に起きる現象です。
30代、40代、50代、60代となって、まだ人はこんなにも成長するのか・・・という変化を目の当たりにしたとき、大きな驚きと喜びを感じます。
また、心理療法を通じて、そのように人を導けるようになったことが、私自信の心的外傷後成長とも言えると思います。
あなたが直面している試練や困難にも必ず終わりがあります。
そしてその先に、あなたにも成長が訪れることを、いつも祈っています。
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