心の中から聞こえる親の声
- 北林陽児
- 5月23日
- 読了時間: 3分
前回の記事では、母親との関係性について少し触れましたね。
例えば、ご主人との関係がうまく行かないような場合、その背景には実は母親との関係性があったりする場合があると書きましたね。
これは心理的な問題を語る上で、非常に重要なテーマと言えます。
実際に私に相談される方々の大部分は、母親との関係性の問題を抱えています。
先日、これまでに受けた相談者と相談内容について一覧表にしてみたのですが、8割くらいは女性で、そのほぼ全員が母親との関係性について悩みを抱えていました。
100%ということではありませんが、心理的な問題の核心部分は、母娘関係にあると言っても良いのかもしれません。
ここで、「母娘」というのは割合として多いことから母と娘を象徴的に扱っているのですが、実際には父息子だったり、父娘だったり、母息子も含まれます。
マンガ『5つの魔法』で少し触れているのですが、私自身も父親との関係に長らく苦しい思いをしていました。
私の父は公認会計士という社会的地位も収入もかなり高い職業の人でして、「医者か弁護士か会計士以外はありえない」という不文律のような厳しい規範を押し付けられていました。
高校生の頃にはなんの疑問も持たず、現役で京都大学に入って、在学中に会計士に合格して、ニューヨークで働きたいな・・・と思っていました。
しかし、ある時期から勉強ができない、大学に行けない、試験を退席する、単位が取れない、就活もできない、卒業もできないという状況に陥りました。
それ以前までは良かったわけです。
「医者か弁護士か会計士以外はありえない」という規範に沿ってきちんと生きている間は、心理的な問題は生じません。
しかし、ひとたび、その規範から外れてしまうと、心理的な地獄が始まりました。
もちろん、私は京都、父は秋田にして、会うことも話すことも、年に数回程度でした。
しかし、父は、私の心の中に棲んでいて、毎日毎日、苛烈に叱責してくる声が聞こえてくるのです。
この父の声には長年に渡って苦しめられました。
この「心の中に棲んでいる声」に苦しめられるということは、多くの人にあることなのではないでしょうか。
母娘問題においても、「ああしなさい」「こうしなさい」「これはダメ」「あれはダメ」「あなたのためなのよ」というような声が聞こえてくることはないでしょうか。
そのような声が聞こえてくるような場合には、その声を心の中から消し去ることが、心理療法のセッションにおける重要目標の1つということになります。
「え、そんなことできるの?」と思われるかもしれませんが、それはもちろんできます。
私自身の心の中から父の声を消したことは当然のことですが、多くの相談者の方とのセッションにおいてもそのようにしてきました。
毎日毎日、自分を責め立ててくる声があったとして、その声がキレイに消えて、心の中が静かになったとしたら、どんな気分だと思いますか?
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