クライエントと自分と、運命
- 北林陽児
- 2023年8月23日
- 読了時間: 4分
安全安心を提供できない未熟さ
昨日の記事では、強いストレスで眠りに落ちてしまうことがあると書きました。
自分の心の奥深くと向き合うことは、時として辛く苦しくストレスになるので、眠りに落ちることによって意識を遮断して自分の心を守るのだと述べました。
それは、安心安全を提供できていないセラピストの未熟さによるものということでしたね。
さて、それでは、セラピストはどのように、その未熟を克服して、安心安全を提供できるようになるのでしょうか?
ロジャースの中核三条件
この課題について、先人はどのように述べているのでしょうか?
カウンセリング(来談者中心法)を作ったロジャースは、カウンセラーの中核三条件を提唱しています。
三条件とは、純粋性、無条件の肯定的関心、共感的受容の3つで、ロジャースはセラピストがこの3つさえ満たしていれば、あらゆる心理問題は解決できるという仮説を論文にしています。
残念ながら、その仮説は本人によって棄却されたのですが、この三条件はカウンセラーが身につける能力の常道です。
ところで、このロジャースという人は、クライエントの話をひたすら聞く来談者中心法という心理療法を作ったのですが、私自身はイメージ療法を用いた違うスタイルの心理療法家です。
来談者中心法はセラピスト側はひたすら話を聞くスキルなのですが、それに対してイメージ療法のようなことを行う場合には、セラピスト側がクライエントに対してより積極的に働きかけることとなります。
セラピスト側が積極的に能動的に働きかける場合、三条件を満たすのが難しくなるようが気がしています。
何故かというと能動的に働きかける以上は、どうしてもセラピスト側の意図というかエゴのようなものが混ざってしまうからです。
セラピスト側のエゴが入ってしまうと、三条件は破綻してしまうのではないでしょうか。
セラピスト側の強い思い
エゴとは、例えば「自分の力やスキルを使いたい」「問題を解決したい」「成果を上げたい」「この人の役に立ちたい」というような気持ちで、このような思いがエネルギーとならなければ能動的に働きかけることはできないでしょう。
しかし、そのようなクライエント側の強い気持ちは、中核三条件に対して反する結果を出す場合があると思います。
ちょっと話が難しくなってしまった気がしますね。
何を言っているかと言うと、「自分の力やスキルを使いたい」「問題を解決したい」「成果を上げたい」「役に立ちたい」という欲望をセラピストが持つことによって、セラピーがセラピスト中心になって、その結果、安全安心が軽視されて強引な働きかけをしてしまうのではないかということです。
そして、その安全安心を軽視した強引な働きかけを行うと、クライエントが眠りに落ちるというような現象も起きてしまうわけです。
つまり、セラピストが未熟さとは、「自分の力やスキルを使いたい」「問題を解決したい」「成果を上げたい」という自分の欲望がベースにあるということを意味しています。
3つのことを信頼する。
さて、それで、この問題はどのように解決するかと言えば、私自身は「信頼」なのではないかと思っています。
何を信頼するかと言えば、3つのことを信頼します。
第一に、クライエントのことを信頼するということで、そもそもクライエントには問題解決をする能力が備わっていると信頼することです。
第二に、自分の能力を信頼するということで、そんな欲求など持つまでもなく問題解決できると自分自身を信頼することです。
第三に、運命を信頼するということで、そんなクライエントと、そんな自分が、何故か出会ってセッションするに至っているわけだから、その運命の流れに任せれば問題は当然解決されると信頼することです。
クライエントの皆さんは、私のセッションを受けるに至るまでに、様々な葛藤や躊躇といった障害を乗り越えて、遂にその場に来てくれたということを私は知っています。
私は、その長いプロセスの中の最終局面を担当しているに過ぎず、そのプロセスの流れ、つまり運命を信頼するのです。
自分の中でそのような信頼が固まってくると、もはや「自分の力やスキルを使いたい」「問題を解決したい」「成果を上げたい」という欲望はバカバカしいことのように思えてきて、欲望を手放すことが可能になります。
私が、そんなことを考えて頑張るまでもなく、このセッションはうまくいくし、それはもうそういう運命としてあらかじめ決まっているわけですから、そんなことを考える必要はないからです。
この信頼は、ピンチの時ほど効果を発揮する気がしています。
たまに、セッションがうまく展開せず、時間だけが過ぎてしまって思うような成果が上がらず、残り時間が少ない、やばいなピンチだな・・・という場面があります。
そういう時こそ、自分の力で打開しようとせず、流れに身を任せればうまくいくと信じるわけです。
そうすると、クライエント側に新しい展開が見られたり、自分の中で思いもしない発想が生まれてきたりして、残り僅かな時間の中で大きな成果があがるということが起きます。
と、ここまで大変熱く語ったのですが、ごく最近、セラピー中に「眠くなった(眠りには落ちていませんが・・・)」と言われました。
私もまだまだ未熟なようです笑
私は、これまで他で受けた療法に変化の実感がなく、治療やカウンセリングに、疑問、否定的なイメージがあります
そこには自分へ、相手へ、運命への、信頼の気持ちは一つもなかったなと思いました
まず自分を信頼…これが自己肯定感がないと、難しい
長年問題を抱え、セッションまでたどり着いたクライエントは、解決に到達する直前…
問題を解決したいと思った時から、運命は導いているのかも…
こちらのHPにたどり着いた事も、偶然に思えるが、運命だったのか
いつもありがとうございます。
セラピストさんを信頼し、自分の力を信頼し、そして運命を信頼する…
セラピーに限らず、日常生活の中でも心の支えになる素晴らしいお話。
感謝です!